PR

MMT(現代貨幣理論)とは簡単に言うと?デメリットはないの?

スポンサーリンク
記事内に広告が含まれています。

最近、経済の分野で「MMT」といった言葉を耳にすることが多くなった。MMTというのは、

Modern Monetary Theory

の略であり、日本語に訳すと「現代貨幣理論」となる。ニューヨーク州立大の教授であるステファニー・ケルトンらによって提唱されている理論である。

MMTはもっと古くからあった理論であるが、2019年にアメリカのアレクサンドリア・オカシオコルテス議員が支持することで、注目を集めることになった。

MMTについてなるべく簡単に解説していきたいと思います。

お札のイラスト

MMT(現代貨幣理論)を簡単にいうと?

MMTを簡単に言うと、次のようになる。

  1. 税は財源ではない。
  2. 自国通貨建ての国債は破綻しない。
  3. 国債発行の限界はインフレ率で決まる。

それでは、これらを具体的に見ていきましょう。

1.税は財源ではない

よく言われるのが、「国はできるだけ税収の範囲内で予算を組まなければならない。」であるが、MMTはこれを否定している。

税収など気にせず、基本的には国債を発行すればいいという考え方である。つまり、税は財源ではなく、国債が財源だといっている。

ニュースなどではよく「国の借金が過去最高になりました。」などと言われるが、MMTの考え方なら、このようなものは全くに気にしなくていいということになる。

それなら税なんか始めから取らなければいいのでは? と思うかもしれないが、MMTでも税金は必要とされている。税金には次のような役割があるという。

  • 通貨の価値を創造
  • インフレの抑制
  • 格差是正
  • 行動の抑制

順番に説明しておこう。

通貨の価値を創造

MMTでは「税を取ることによって通貨に価値が生まれる」とされている。

昔は金や銀といった金属そのものが通貨となっていたし、近年では金本位制などやはり金属が通貨の裏付けとなっていた。しかし、現在では通貨にそういった金属の裏付けはなくなっている。

しかし、そのような通貨は本来ならただの紙切れのはずだが、国が税を取ることによって人々にとって必要なものになり、価値が生まれるということだ。

インフレの抑制

インフレというのは基本的には景気が過熱して人々がお金をつかい過ぎたときに発生する。インフレにはコストプッシュ・インフレとディマンドプル・インフレがあるが、ここで言っているのはディマンドプルのほうである。

  • コストプッシュ・インフレ:輸入価格やエネルギー価格の高騰で発生
  • ディマンドプル・インフレ:需要が供給を上回ることで発生

MMTによると増税には経済を失速させて、インフレを抑制する効果があるとされている。

日本が他国と比較して異例に長い間経済成長しない要因は、増税や社会保険料をずっと上げ続けてきたからだと言えるだろう。

つまり、MMTではインフレになれば増税して経済を冷やせばいいということになり、逆に景気が悪いときは減税をすればよいということになる。税金は景気を調節するためのスタビライザー(安定化装置)の役割をはたすというのだ。

ちなみにコスト・プッシュ・インフレを抑えるためには、原因となっている輸入品やエネルギーの価格に対して財政出動して何らかの補助をすればよい。

それでも収まらないということは単純に補助が足らないからである。ロシアのウクライナ進行後に起こっている日本の物価上昇はこれが主要原因である。

格差是正

格差是正については、言うまでもないだろう。お金持ちや設けている企業から税金を多く取って、貧乏人に分配する機能だ。これがなければ、格差は広がり続けて人々の不満が広がってしまう。

行動の抑制

これは国がやってほしくないことに税金をかけると、行動が抑制できるというものである。例としては、タバコは健康の被害などがよく言われるが、これに税金をかけることによって、止める人が増えるといった具合である。

現代では大気汚染などの問題もあるので、車の排気量に応じてより課税することで、人々はより排気量の少ない車を選ぶことになる。

2.自国通貨建ての国債は破綻しない

「国債を発行し続けると国の借金が膨れ上がっていくけど大丈夫なの?」と思うかもしれない。それを裏付けているのが「自国通貨建ての国債は破綻しない」という理論である。

自国通貨建ての国債というのは日本で言えば、国債を発行して円を調達するということだ。日本で国債を発行してドルを調達すれば、自国通貨建てにはならない。

MMTでは自国通貨建ての国債、日本で言うなら円建ての国債はいくら発行しても破綻しないと言っている。もう少し詳しく言うと、

変動相場制の国において、政府が自国通貨建てで国債を増やし続けても、破綻は起こらない。

ポイントとなるのは、

  • 変動相場制
  • 自国通貨建ての国債

である。日本は変動相場制の国であり、「円」という自国通貨建てで銀行などから借金をしているので、当然この条件を満たしていることになる

変動相場制とは

変動相場制というのは、「1ドル120円」だったものが「1ドル130円」になったり、「1ドル110円」になったりとと、為替が取引量で変動する制度である。

逆に1973年までは、日本は何があっても「1ドル360円」と決めていた。このように為替が固定されている制度を固定相場制という。

ちなみにタイでは以前はバーツという通貨とドルとの固定相場制が取られていたが、1997年にヘッジファンドの攻撃によって固定相場制を維持できなくなり、変動相場制に移行している。

その結果、バーツの価値は対ドルで暴落し、ヘッジファンドは大儲けをした。固定相場制だったために事実上の破綻をしてしまった格好だ。

自国通貨建ての国債とは

ドイツやフランスなどのEU諸国では、ヨーロッパ中央銀行(ECB)が発行してる共通通貨であるユーロを使用しており、それは自国通貨ではないのでMMTの条件は満たさない。

また、韓国のように自国通貨(ウォン)はあるけれど、ウォン以外にもドル建てで国債で発行している国は、この条件は満たしているとは言えない。

日本のように条件を満たしている国であれば、自国通貨である円で国債を発行し続けても、インフレになるだけで破綻はしない。なぜなら、日本銀行が国債を無限に買い入れることができるからだ。中央銀行が買い取った国債には基本的には利息を払う必要はない。

3.国債発行の限界はインフレ率で決まる

自国通貨建ての国債をいくら発行しても破綻しないのであれば、国債を無限に発行すればいいじゃないかという話になるだろう。

しかしこれをやりつづければ、インフレが加速していく。国が破綻しなくても、物価が急激に上昇してしまえば、人々の生活は苦しくなる。

一般的にはインフレ率は2%程度が望ましいというが、MMTではインフレ率が目標以下なら、いくらでも国債を発行していいということである。

ちなみに資本主義は、マイルドなインフレが継続しないと成り立たない。お金の価値が継続的に下がっていくという確信があるから、企業や個人はどんどん借金をして投資や消費をするのだ。

インフレが持続すれば、借金は返済しなくても、年月がたつにつれていつの間にか相対的に小さくなっている。それは、個人、企業、国どれにも共通する。

国家予算のマイナス会計も問題なし?

日本の国家予算(一般会計)は税収よりもかなり多いのが現状だ。つまり、収入よりも支出のほうが大きく上回っている。

例えば2020年度だと、約63兆円の税収に対して、予算は約102兆円と大きく上回っている。マスコミはこれをよく問題視しているが、MMTの観点からは、これは全く問題ないということになる。

なぜなら、日本は長いデフレマインドに苦しめられており、インフレ率は各国と比較して低いからである。

MMT(現代貨幣理論)のデメリットは?

現在の日本にとって夢のような理論であるMMTですが、デメリットはないのだろうか。あえて上げるとすれば、それは行き過ぎたインフレになったときの出口だろう。

インフレが加熱したときの対策としては次のものがあげられる。

  • 国債の発行を減らす。
  • 増税する。
  • 中央銀行が利上げをする。

国債の発行を減らす

「国債の発行を減らす。」というのは、簡単なように感じるが実は難しい。その恩恵を受けている勢力の激しい抵抗に会うからだ。特に人件費などの固定費は早々簡単には減らすことはできない。

対策としてはインフレを促進したいときは、一時給付金などの簡単に止められるものに対してなるべく予算を使うことである。MMTなら国債を発行しまくっても問題ないとは言っても、固定費を無尽蔵に上げても大丈夫だということにはならない。

増税する

「増税」も国民の激しい抵抗にあって、そのときの政権は間違いなくダメージを受けるだろう。ましてや物価高騰で国民が苦しんでいるときに、増税とは何事だという話になりかねない。そのため、政権に倒れる覚悟でもなければ簡単にはできることではない。

消費税なんかはものすごいインフレ抑制効果があるが、現状のシステムだと法改正などをして、そのあとしばらくして執行ということになるので、インフレで困ってから対策にかなり時間がかかってしまう。

MMTに対応するためには、「インフレ率がある一定期間、何パーセントを超えていたら自動的に消費税を1%上げる」などの制度が必要になるかと思う。政府の裁量で増税したら、国民の反感を買ってしまうからだ。

中央銀行が利上げをする

「中央銀行の利上げ」は、比較的簡単にできて現実的な対策であるが、利上げをしてから景気が落ち着くまでにやや時間差がある。さらに利上げをしても、政府が国債を発行しまくっていれば、なかなか効果が出にくい。

つまり、MMTのデメリットを上げるなら、インフレが加熱したときの出口戦略に不安があるということである。消費税の軽減税率などをもっと簡単にすばやく操作できるようにするなどの制度が必要なのかもしれない。

まとめ

MMT(現代貨幣理論)について、できるだけ簡単に解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

この理論は長年低成長に苦しんでいる日本にとっては、まさは希望といえます。ですが、これはできるだけ多く税を集めて、できるだけ少なく予算を組みたい財務省にとっては悪夢の理論になります。

政府では財務省の影響が強く、政治家たちも財務省の言いなりな人がまだまだ多いといえます。MMTの影響を受けている政治家も出てきていますが、まだまだ少数派で勢力的には弱いと言えるでしょう。

政治家はよく、「財政再建のために、増税をお願いしなければならない。」「未来につけを残さないために、借金を増やしてはいけない。」などというが、その先に待っているのは、

増税 → 景気後退 → 税収減 → 増税
といった負のスパイラルである。そう、日本がここ数十年進んできた道である。

コメント

タイトルとURLをコピーしました