新型コロナウイルス(COVID‑19)の騒動が始まって、まもなく1年半が経過しようとしているが、このウイルスの起源についてはご存知だろうか?
今のところ、このウイルスの発生地として有力視されているのは中国の武漢であるが、オリジナルの宿主は何なのだろうか? それともこれは人工のものなのだろうか?
この疑問についてだが、世界保健機関(WHO)は発生場所と思われる武漢を視察して、その調査報告書で
研究所から漏れ出て広がったとする仮説は「極めて可能性は低い」
と結論づけている。これによって、「ウイルス自然由来説」が有力であることはほぼ確定したかにも見えたが、ここに来て事態は一変している。
ウイルス人工説は当初から唱える者がいたが、その後は陰謀論として片付けられるようになり、フェイスブックなどのSNSで人工説について投稿すれば、削除の対象となっていた。
しかしフェイスブックは最近、新型コロナウイルス感染症の「人工ウイルス説」に関する投稿を、削除対象から除外するよう方針転換を行ったと海外メディアが報じている。
また、アメリカのバイデン政権もその流れを汲んで「研究所から流出の可能性」に触れ、90日以内の再調査を命じたことを明らかにした。
それにしても、なぜウイルス人工説は陰謀論として片付けられ、ここにきて再度注目を浴びるようになったのだろうか。そのあたりについて探っていきたい。
ウイルス人工説が陰謀論扱いされた理由
ウイルス人工説は陰謀論扱いされ、次第にかき消されてしまったのはなぜなのだろうか?
権威のある医学雑誌が人工説を否定
新型コロナの流行が始まった直後から、このウイルスは人工のものではといった説がいくつか飛び交っていたが、2020年2月19日、ウイルス人工説を否定する論が権威あるとされる医学雑誌のランセットに27人の科学者によって掲載された。
掲載された内容は
「新型コロナウイルスは自然に発生したものだと主張し、それ以外の仮説については恐怖、噂、偏見を生むだけの陰謀論」
と激しくウイルス人工説を否定するものだった。
動物学者「武漢研究所にコウモリはいなかった」
新型コロナ(COVID‑19)が自然発生したにせよ、人工だったにせよ、このウイルスはコウモリ由来のものであるという説は有力であることは間違いない。
武漢でパンデミックの起源を調査したWHOチームのメンバーである動物学者ピーター・ダザック氏は2020年12月に次のようにツイッターで主張した。
「現場で収集されたウイルスの遺伝子解析のために武漢研究所にコウモリが送られたという事実はない。それが現在の研究のやり方だ。私たちはコウモリのサンプルを収集し、研究所に送る。コウモリは捕獲した場所で解放する」
「私は15年間この仕事に従事してきたし、武漢研究所と協力してきた。研究所には生きたコウモリは絶対にいない」
実際に研究所で働いていた人が、このような証言をしたのもウイルス人工説が否定される要因になったと考えられる。
ファウチ所長もウイルス人工説を否定
新型コロナ対応で日本でも一躍有名になった米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長もウイルス人工説を否定するひとりだった。このことも、ウイルス人工説は陰謀論であると傾いた要因だろう。
当時の米大統領であるトランプ氏は人工説を主張していたが、彼は主要マスコミに目の敵されており、デタラメなことばかりを言って信用できない大統領だと過度に印象付けようとされる傾向があったことは否定できないだろう。
そのため多くのメディアに、トランプ氏の主張と逆の結論を出そうとするバイアスがかかっていたのも影響したようだ。今になって実はトランプ氏が言っていたから、ウイルス人工説を信用しなかったという声も聞こえてくる。
ウイルス人工説が再注目された理由
一度は陰謀論として片付けられてしまっていたウイルス人工説がここに来て再注目されるようになった。では、なぜ再注目されるようになったのかを見ていこうと思う。
武漢ウイルス研究所で危険な実験が行われていた?
さて、トランプ氏とは逆にメディアの信頼を得ていた米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長だが、ここに来て、彼に関する衝撃的な事実が明らかになった。
ファウチ所長はウイルスの機能獲得実験という危険な実験のために武漢ウイルス研究所に、NPO法人「エコヘルス・アライアンス」を通じて米政府の資金を提供していたということがわかったのだ。
武漢ウイルス研究所でウイルスに関する危険な実験を行っていたといえば、だれでもこの研究所から危険なウイルスが漏れたのではないかと疑うはずだ。
ファウチ所長が人工説を否定したのは、実はこのことを隠したいからではないのかと、疑うことも出るようになった。
ウイルスの機能獲得実験とは?
この機能獲得実験というのは、ウイルスを遺伝子操作してウイルスが持つ機能を増強したり、機能を付加したりするが、それにより、ウイルスがどう変異して感染力が高まるか研究することができたり、より優れたワクチン開発に向けた研究ができたりするものである。
だがその一方で、実験中に恐ろしいウイルスが生み出され、それが研究所から流出してパンデミックを引き起こすリスクもあると懸念されて、この実験に対する連邦助成金の提供を中断され、アメリカではこの実験は実質的にできなくなっていた。
ファウチ氏らはアメリカではできなくなっても、他の国ならできると考えて、武漢ウイルス研究所に補助金を渡して依頼したと思われる。
騒動前に武漢ウイルス研究所の研究員3人に感染?
日本でもワールドビジネスサテライトなどて取り扱っていたが、
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は23日、中国・武漢のウイルス研究所の研究者3人が2019年11月に体調を崩し、病院で治療を受けていたことが米情報機関の報告書で明らかになったと報じた。(時事通信)
といったニュースも、ウイルス人工説を後押しした。この3人は実は新型コロナに感染したのではないかと疑われており、この件についてファウチ所長が、中国に研究員のカルテの公表などを要求したが、その後どうなったからは続報は出ていない。
英国の研究者「人工的に変造されたことを突き止めた」
また新型コロナが人工という証拠になりそうな次のような情報がヤフーニュースなどに掲載された。
新型コロナウイルスの武漢研究所流出説が再燃する中、英国の研究者らがウイルスが中国の同研究所で人工的に変造されたことを法医学的に突き止めたと、近刊の学術誌で論文を発表する。
英国の日刊紙デイリー・メイル電子版28日の特種報道で、近く発行される生物物理学の季刊誌Quarterly Review of Biophysics Discoveryに掲載される学術論文を事前に入手し「中国がコロナウイルスを造った」と伝えた。
これが真実なら、ウイルス人工説は決定的となって、焦点はどこで作られたのかということになる。
武漢ウイルス研究所に大量のコウモリがいた?
武漢ウイルス研究所にはコウモリはいなかったという証言があったのは前に述べたが、ここにきて2017年5月に武漢ウイルス学研究所内で撮影されたとされる映像の中にコウモリが写っていることが確認されたのだ。
詳細を知りたい方は次の記事を見ていただきたい。
これによって、武漢でパンデミックの起源を調査したWHOチームのメンバーである動物学者ピーター・ダザック氏の証言に疑問がもたれるようになった。
武漢ウイルス研究所にコウモリはいなかったというは本当に正しいのか、ダザック氏の説明が待たれるところだ。
まとめ
一時は陰謀論として片付けられてしまいかけていた新型コロナウイルス人工説であるが、ここにきて注目を浴びるようになってきたのはお分かりいただけただろうか。
仮にそれが本当だったとしても、中国政府は決して認めることはないだろう。なぜなら、武漢ウイルス研究所で作られていたことが確定した場合は、他国からの莫大な賠償請求が行くと思われるからだ。
つまり、ウイルスが人工だった場合は、真実が確定することは未来永劫ないのかもしれない。ただ、今も状況証拠となりそうなものは次々と出てきており、人工説を疑う流れは止まりそうもない。
人工説を否定するには、由来と思われるコウモリからどのように媒介して人間に感染するようになったのかを解明するしかない。
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