水族館に子どもを連れて行ったとき、「ジンベイザメはどこにいるの?」と聞かれて、「今日の水族館にはいないんだよ」と答えたら、すごくがっかりした顔をされてしまった……そんな経験、ありませんか?
あの大きくてゆったり泳ぐジンベイザメは、子どもたちに大人気の生き物ですよね。でも実は、ジンベイザメを見られる水族館は全国にたった数館しかないんです。「なぜ近所の水族館にはいないの?」「どうしてテレビでよく見るのに会いに行けないの?」と疑問に思っているママも多いのではないでしょうか。
じつはジンベイザメの飼育は、想像をはるかに超えるほど難しいのです。その理由を知ると、「なるほど!」と思わず納得してしまうはず。この記事では、ジンベイザメの飼育がこれほどまでに難しい理由を、子どもに説明できるくらいわかりやすく解説します。
記事を読み終えるころには、子どもから「なんでジンベイザメは少ないの?」と聞かれてもしっかり答えられるようになりますよ。ぜひ最後まで読んでみてください。

ジンベイザメってどんな生き物?まずは基本を知ろう!
ジンベイザメの飼育がなぜ難しいのかを理解するには、まずこの生き物がどんな生き物なのかを知ることが大切です。体の特徴や食べ物、どんな海に住んでいるかがわかると、飼育の難しさが自然と見えてきます。
世界最大の魚類!その体の大きさは想像を絶する
ジンベイザメは、魚の中でもっとも大きな生き物です。平均的な体長は約10メートルほどで、大きいものでは20メートルを超えることもあると言われています。体重も、最大で35トンほどになる記録があります。
体の大きさをイメージしてもらうと、だいたい路線バスを横に2台並べたくらいになります。これほど大きな生き物が優雅に泳ぐ姿は、まさに圧巻のひとことです。
プランクトンしか食べない!意外な食生活
あれだけ大きな体をしているのに、ジンベイザメが食べるのは主にプランクトンや小さな甲殻類、そして小魚などです。口の幅は最大1.5メートルほどもあるのに、のどの奥はコインほどの大きさしかないため、大きなものは飲み込めません。
海水をごくごくと飲み込んで、エラにあるくし状の器官でプランクトンだけをこし取って食べます。このような食べ方を「ろ過摂食」といいます。見た目はサメですが、性格はとても穏やかで、人間に危害を加えることはほとんどありません。
暖かい海を広く回遊する!行動範囲の広さ
ジンベイザメは、熱帯から温帯にかけての暖かい海域に広く分布しています。特定の場所にとどまらず、えさを求めて何千キロもの距離を移動することが知られています。
日本では沖縄の海でよく見られますが、深海まで潜ることもある、とても行動範囲の広い生き物です。一匹で行動することが多く、群れをつくる習性はほとんどありません。
水槽のサイズが命!ジンベイザメの飼育が難しい理由①
ジンベイザメの飼育がこれほど難しいと言われる理由のひとつ目は、その圧倒的な体の大きさにあります。大きな生き物を水槽で飼うには、それ相応の設備が必要になります。ここでは、設備の面での課題について詳しく見ていきましょう。
巨大な水槽が必要なのは当たり前!でも水深も重要
ジンベイザメを飼育するためには、まず非常に大きな水槽が必要です。体長10メートル以上の生き物が泳ぎ回れるスペースを確保しなければなりません。水槽の面積だけでなく、水深もとても重要です。
ジンベイザメはえさを食べるとき、体を垂直に立てて水面に向かう独特の姿勢をとることがあります。そのため、沖縄美ら海水族館では水深を10メートルに設定しているほどです。これほどの水槽を用意できる施設は、世界でも限られています。
成長するとどんどん大きくなる!水槽が手狭になる問題
水族館に連れてきたときは体長5〜6メートルでも、飼育を続けるうちに成長してどんどん大きくなっていきます。体が大きくなりすぎると、もはや水槽では飼い続けることができなくなってしまいます。
そのため、多くの水族館では体長が6メートルほどになる前に海に放流するという方法をとっています。新しい個体を連れてきては、また一定期間飼育して放流するという繰り返しになるわけです。これだけ手間と費用がかかる飼育は、どの施設でも簡単にはできません。
設備の維持だけで莫大なコストがかかる
巨大な水槽を維持するには、水の温度管理や水質管理など、常に膨大なコストがかかります。ジンベイザメが快適に過ごせる水温を保つためのヒーターや冷却設備、そして大量の海水を清潔に保つためのろ過装置など、設備投資だけでも相当な金額になります。
一般的な水族館では、これだけの設備を整えることが現実的ではありません。日本でジンベイザメを見られる水族館が数館しかない理由のひとつは、まさにこうした設備面のハードルの高さにあります。
えさの確保がとにかく大変!ジンベイザメの飼育が難しい理由②
水槽の問題をクリアしたとしても、次に立ちはだかるのが「えさ」の問題です。あれだけ大きな体を維持するためには、毎日大量のえさが必要になります。しかもジンベイザメが食べるのは、プランクトンのような微小な生き物です。ここでは、えさにまつわる苦労をご紹介します。
プランクトンを毎日大量に用意するのが難しい
ジンベイザメはプランクトンをろ過して食べるため、一日に必要なえさの量は非常に多くなります。自然界では広い海を泳ぎながら大量のプランクトンを食べていますが、水槽内ではえさを自分で探すことができません。
飼育員さんたちは、毎日大量のオキアミや小魚を手作業で準備します。水槽の中に直接えさを投入したり、ジンベイザメが食べやすいように工夫したりと、えさやりだけでも膨大な労力がかかります。
食欲の変化に気づくのが健康管理のカギ
ジンベイザメが健康かどうかを確認するために、飼育員さんたちはえさを食べる様子を毎日丁寧に観察しています。食欲が落ちていたり、食べ方がいつもと違ったりすると、体調不良のサインである可能性があります。
また、海遊館では排泄物(うんち)を採取して顕微鏡で確認することで、えさの消化状態や健康状態を把握するという方法をとっているそうです。子どもには少し驚きかもしれませんが、それほど丁寧に管理されているということですね。
採血や健康チェックも一苦労
ジンベイザメの健康を守るためには、定期的な血液検査も必要です。しかし、あれだけ大きな生き物から採血するのは、とても危険で難しい作業です。
海遊館では長年かけてトレーニングを重ね、ジンベイザメが立ち泳ぎでえさを食べている最中にダイバーが近づき採血できるようになりました。こうした努力の積み重ねが、ジンベイザメの飼育を支えているのです。
ストレスにも敏感!ジンベイザメの飼育が難しい理由③
ジンベイザメはとても神経質な一面を持っています。環境が変わったり、水槽に慣れなかったりすると、強いストレスを感じてしまいます。野生では広い海を自由に泳ぎ回っている生き物ですから、狭い(とはいえ巨大な)水槽の中での生活はそれだけでも負担になります。
広い海から水槽へ!環境の変化が大きなストレスに
自然界では何千キロもの海を回遊するジンベイザメが、水槽という限られた空間に閉じ込められることは、想像以上のストレスになります。環境の変化に敏感なため、水族館への搬送中や水槽に移した直後は特に注意が必要です。
搬送にかかる時間や方法、水温の変化なども、ジンベイザメの体調に大きく影響します。無事に水槽に移せたとしても、しばらくの間は食欲が戻らなかったり、元気がなくなったりすることもあります。
水槽の壁にぶつかってしまう事故も
広い海を泳ぎ慣れているジンベイザメは、水槽の壁があることをうまく認識できずにぶつかってしまうことがあります。大きな体でぶつかると、けがをしてしまうリスクもあります。
飼育員さんたちは常にジンベイザメの泳ぎ方を監視して、異常があればすぐに対応できるよう体制を整えています。こうした細やかな見守りも、飼育の大切な仕事のひとつです。
他の魚との共存にも気を使う
水槽の中にはジンベイザメだけでなく、他の魚も一緒に展示されていることがあります。ジンベイザメ自体は穏やかな性格ですが、大きな体が他の魚にぶつかってしまったり、他の魚が誤ってジンベイザメに吸い込まれてしまうリスクもあります。
混泳できる魚の種類や数の管理も、飼育員さんたちにとって細心の注意が必要な作業です。
謎が多い生き物!ジンベイザメの飼育が難しい理由④
ジンベイザメの飼育が難しいもうひとつの大きな理由は、この生き物についてまだわかっていないことがとても多いという点です。生態の謎が多いと、飼育の方法も手探りにならざるを得ません。
繁殖が確認されていない!謎に包まれた出産
ジンベイザメは世界中の水族館で飼育されていますが、水槽内での繁殖に成功した事例はほとんどありません。自然界でどのように繁殖しているかも、まだ多くの謎が残っています。
メスのジンベイザメの体内から複数の子どもが見つかった事例があり、卵胎生(卵が母親の体内でかえる方式)であることはわかっています。しかし、具体的な繁殖行動や出産の様子はほとんど観察されていません。
寿命もまだはっきりわかっていない
ジンベイザメがどのくらい生きるのかも、まだはっきりとは解明されていません。研究者によって70年以上生きるという説もありますが、正確な寿命はわかっていないのが現状です。
寿命や成長速度がわからないと、適切な飼育計画を立てることもむずかしくなります。長期的にどうケアすればいいのか、どの段階で海に戻すべきなのかも、試行錯誤しながら決めていかなければなりません。
深海での行動はほとんど謎
ジンベイザメは海面近くで過ごすことが多い一方で、えさを探すときには深海まで潜ることもあります。しかし、深海でどのような行動をしているかは観察が非常に難しく、まだよくわかっていません。
こうした謎が多いほど、水族館での飼育も手探りになってしまいます。「何かいつもと違う」と感じても、正解がわからないことも多いのです。
世界でも数館だけ!日本でジンベイザメを見られる水族館
ジンベイザメの飼育がいかに大変かがわかったところで、実際にジンベイザメを見られる場所をご紹介します。飼育の難しさを乗り越えてジンベイザメを展示している水族館は、世界でもごくわずかしかありません。日本ではいくつかの施設で見ることができます。
沖縄美ら海水族館(沖縄県)
沖縄美ら海水族館は、世界で初めてジンベイザメの長期飼育に成功した水族館です。「黒潮の海」と呼ばれる巨大水槽は、幅35メートル・奥行き27メートル・水深10メートルというスケールで、ジンベイザメが悠々と泳ぐ姿を間近に観察できます。
世界最長の飼育記録を誇るジンベイザメ「ジンタ」も、ここ美ら海水族館で大切に育てられています。子どもが大喜びすること間違いなしの、迫力満点のスポットです。
海遊館(大阪府)
大阪にある海遊館も、長年にわたってジンベイザメの飼育を続けている施設です。「太平洋」と呼ばれる水槽は容量5,400トンという大型水槽で、ジンベイザメをはじめとした多くの海の生き物たちが展示されています。
海遊館はジンベイザメの健康管理技術でも世界をリードしており、採血トレーニングなど独自の研究成果を積み重ねています。関西方面にお出かけの際はぜひ訪れてみてください。
いおワールドかごしま水族館(鹿児島県)
鹿児島にあるいおワールドかごしま水族館でも、ジンベイザメを見ることができます。ジンベイザメの生態研究にも積極的に取り組んでいる施設で、来館者にたくさんの情報を発信しています。
九州旅行の際の立ち寄りスポットとしても人気があります。
水族館巡りのお供に
水族館に子どもと出かけるなら、快適に楽しめるグッズがあると便利ですよね。特に水族館は長時間歩き回ることが多いので、子ども用のリュックやショルダーバッグがあると手がふさがらず楽になります。
また、館内のフードコートや外での食事の際に役立つ折りたためるエコバッグや保冷バッグもあると重宝します。
よくある質問
ジンベイザメについて調べていると、「そういえばこれが気になっていた!」という疑問がたくさん出てくるものです。ここでは、よく寄せられる質問をまとめてお答えします。お子さんに聞かれたときの参考にもなりますよ。
ジンベイザメはどのくらいの大きさになるの?
ジンベイザメは魚の中でもっとも大きな種類で、平均的な体長は約10メートルほどです。記録によると、最大で全長20メートル・体重35トンほどになる個体も確認されています。路線バス2台分くらいの長さをイメージすると、その大きさが伝わりやすいかもしれません。体は大きいのに食べるのはプランクトンや小魚という、なんともユニークな生き物です。
ジンベイザメは人間を食べることはあるの?
ジンベイザメが人間を食べることはまずありません。口は大きくても、のどの奥はコインほどの大きさしかないため、人間を丸ごと飲み込むことはできないのです。性格もとても穏やかで、ダイバーが近くを泳いでも逃げず、襲うこともほとんどありません。むしろ、一緒に泳ぐことができるほど人懐っこい面もある生き物です。
なぜジンベイザメを見られる水族館は少ないの?
ジンベイザメは非常に大きく、飼育するためには巨大な水槽と膨大なコスト、そして専門的な技術が必要です。さらに繁殖や生態についてまだわかっていないことも多く、飼育のノウハウが十分に確立されていません。
こうしたさまざまなハードルがあるため、世界でもジンベイザメを飼育できる施設はごくわずかしかありません。日本では、沖縄美ら海水族館・海遊館・いおワールドかごしま水族館などで見ることができます。
ジンベイザメはどのくらい生きるの?
ジンベイザメの正確な寿命はまだはっきりとわかっていないのが現状です。研究者によっては70年以上生きるという説もありますが、長期的な観察が難しく、科学的に確定した答えはまだ出ていません。水族館での飼育においても、長期飼育のデータを積み重ねながら、今もその謎の解明が続けられています。
ジンベイザメは絶滅危惧種なの?
はい、ジンベイザメは国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種(危急種)に指定されています。かつてはフカヒレ目的で大量に漁獲されたことで数が減り、2000年代には世界的な保護政策が打ち出されました。日本でも法律で保護されており、各水族館もジンベイザメの保全活動や研究に積極的に取り組んでいます。
水族館のジンベイザメはどこから連れてくるの?
日本の水族館では、主に定置網(沖合に仕掛けた大きな網)に迷い込んだジンベイザメを保護して飼育しています。たとえば海遊館は、高知県土佐清水市以布利沖の定置網に入ったジンベイザメを引き受けています。漁師さんから連絡を受けた飼育員さんがすぐに駆けつけて、個体の状態を確認した上で水族館に移す流れになっています。
まとめ
今回は、ジンベイザメの飼育がなぜこれほど難しいのかについて、さまざまな角度からご紹介しました。最後に、この記事のポイントを振り返ってみましょう。
ジンベイザメは体長が平均10メートル、最大20メートルにも及ぶ世界最大の魚類です。その巨大な体を収めるためには、特別に大きな水槽と深さが必要で、設備の準備だけでも莫大なコストがかかります。さらに成長とともにどんどん大きくなるため、長期飼育には限界があるのが現実です。
えさの確保も大きな課題のひとつです。プランクトンや小魚を毎日大量に用意し、健康状態を確認しながらていねいに管理するのは、非常に手間のかかる作業です。採血や健康チェックにも特別なトレーニングが必要になります。
またジンベイザメはとてもデリケートで、環境の変化に敏感です。水族館への搬送中や新しい水槽への移動でも強いストレスを感じてしまい、水槽の壁にぶつかってしまうリスクもあります。飼育員さんたちは常に細やかな目でジンベイザメを見守っています。
そして繁殖や寿命、深海での行動など、まだ解明されていない謎が多い点も飼育の難しさに直結しています。謎が多いほど、飼育の手が届かない部分が増えてしまうのです。
それでも、日本の水族館は長年の研究と努力によって、世界をリードするジンベイザメの飼育技術を築き上げてきました。ジンベイザメが見られる水族館を訪れたときは、飼育員さんたちの並々ならぬ努力と情熱も一緒に感じてみてください。きっとジンベイザメの泳ぐ姿が、今まで以上に輝いて見えるはずです。


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