お子さんと水族館に行ったとき、「ママ、タコってどうして黒いものを出すの?」と聞かれて、言葉に詰まった経験はありませんか?
イカの墨はパスタなどで見かけるので何となくイメージできますが、タコの墨となると、意外と知らないことが多いですよね。「びっくりしたからかな?」とつい答えてしまい、あとでこっそり調べた、という方もいらっしゃるかもしれません。
実はタコが墨を吐く理由には、命を守るための賢い作戦が隠れています。さらに、墨の成分やイカの墨との違いまで知っておくと、タコという生き物がぐっと身近に感じられます。
この記事では、タコがなぜ墨を吐くのかという疑問を中心に、墨の正体やイカとの違い、水族館や磯遊びで役立つ豆知識まで、お子さんにも伝えやすい言葉でお話しします。
読み終えるころには、次の「なんで?」にも自信を持って答えられるはずです。さっそく、タコの墨の不思議な世界をのぞいてみましょう!
タコが墨を吐くのはなぜ?命を守るための作戦だった!
まずは、いちばん知りたい「なぜ墨を吐くのか」から見ていきましょう。結論からいうと、タコの墨は身を守るための大切な道具です。ここでは役割を三つに分けてご紹介します。
敵から逃げる時間をかせぐ煙幕になる!
タコは海の中で、ウツボやサメ、大きな魚などにねらわれる立場です。体はやわらかく、泳ぐスピードも魚ほど速くありません。
そこでピンチになると、墨をぶわっと吐き出して、あたりを黒くにごらせます。相手の目から自分の姿を隠し、そのすきにさっと逃げるのです。
映画に出てくる煙幕のような働きですね。お子さんには「忍者が使う煙玉みたいなものだよ」と伝えると、きっと目を輝かせてくれますよ。
敵の感覚をにぶらせる効果もある?
墨の役割は、目くらましだけではないといわれています。海の生き物は、においや味の成分を感じ取って獲物を探すことが多く、墨がその働きをじゃましてしまう可能性が指摘されています。
とくにウツボのように、においを頼りに獲物を探す生き物には効き目が大きいと考えられています。
目だけでなく、においを感じる力もだましてしまうなんて、タコはなかなかの作戦家ですよね。
墨を使うのはいつ?吐いたあとはどうなる?
タコは、いつも墨を吐いているわけではありません。まずは体の色を変えて周りにとけこみ、それでも見つかって追われたときに、墨を使うことが多いようです。
墨は使うとなくなりますが、時間がたてば体の中でまた作られます。ですから、あわてて何度も吐く必要はなく、ここぞという場面で使っているのかもしれませんね。
墨を吐く場面は「こわいとき」だけではない?
水族館の水槽でも、タコが墨を吐く場面があります。多くは、急に大きな音がしたり、水槽をたたかれたりして、おどろいたときです。
つまり、墨は「敵が来た!」と感じたときのサインでもあります。お子さんと見学するときは、そっと静かに観察してあげましょう。
タコの墨の成分は?黒い色の正体を調べてみよう!
「あの黒いものは、いったい何でできているの?」と気になりますよね。ここでは、タコの墨にふくまれる成分や、墨が作られる場所について、むずかしい言葉をできるだけ使わずに説明します。
黒い色のもとはメラニンという色素
タコの墨が黒く見える大きな理由は、メラニンという色素がたくさんふくまれているからです。
メラニンは、私たち人間の髪の毛や肌の色にもかかわっている色素です。つまり、タコの墨の黒さと、お子さんの黒い髪の毛は、同じなかまの色のもとということになります。
このお話をすると「えー!一緒なの?」と、お子さんも思わず身を乗り出してくれるかもしれませんね。
水に広がりやすい理由は粘液にある
墨には、色素のほかに粘液も混ざっています。この粘液のおかげで、墨は水の中でふわっとまとまりながら広がります。
ただし、タコの墨はイカの墨に比べると、さらっとしていて広がりやすい性質があるといわれています。この違いについては、あとの章でくわしくご紹介しますね。
ほかにもふくまれる成分と人への影響は?
研究では、墨の中にメラニン以外にも、さまざまな成分がふくまれていることが分かっています。たとえば、生き物の体の中で色素や神経の働きにかかわる物質などです。
こうした成分が、敵の感覚に影響する可能性があると考えられています。ただし、くわしいしくみはまだ研究が続いている部分もあります。
磯遊びなどで墨が手や服に付いたときは、水でよく洗い流しましょう。目に入ってしまったときなどは、気になる症状がなくても念のため早めに相談すると安心です。
墨はどこで作られてどう出てくるの?
タコの体には、墨をためておく「墨汁嚢(ぼくじゅうのう)」という袋があります。ここで作られた墨は、いったんためておかれます。
ピンチのときには、体から水をふき出す漏斗(ろうと)という管を通して、水と一緒に外へ放たれます。水の勢いにのって墨が出るので、あたり一面にぱっと広がるのです。
イカの墨とは何が違う?タコならではの特徴を比べてみよう!
イカもタコも、墨を吐くことで有名です。見た目も似ているので同じように見えますが、実は墨の性質や使い方に違いがあります。お子さんと一緒に、違いを探してみましょう。
イカの墨はねばり気が強くて「にせもの」を作る
イカの墨は、タコよりも粘液が多く、ねばり気が強いといわれています。吐き出されると、水の中でひとかたまりの黒い影になります。
この影がイカの形に似て見えるため、敵が影のほうに気を取られるのです。その間にイカ本人は、すばやく別の方向へ逃げていきます。
まるで「分身の術」のような作戦ですね。ただし、イカの種類によって使い方はさまざまです。
タコの墨は広がって煙幕になりやすい
一方で、タコの墨はさらっとしていて、水に広がりやすいのが特徴です。ふわっと広がった黒い雲のような墨で、まわりの視界をさえぎります。
イカが「にせものを置いていく作戦」なら、タコは「煙幕でかくれる作戦」というイメージです。
こうして並べてみると、同じ墨でも使い方がちがっておもしろいですよね。
食べ物としてはどう違うの?
イカの墨は、イカ墨パスタやイカ墨ご飯など、料理でおなじみです。お店でも見かけることが多く、お子さんも食べたことがあるかもしれません。
いっぽうタコの墨は、一匹から取れる量が少ないこともあり、料理で使われる機会はあまり多くありません。
ふだん食べるタコには、墨が残らないように下処理がされていることも多いようです。
タコとイカの見分け方も一緒におぼえよう!
墨のお話のついでに、見た目の違いもおさらいしましょう。タコの足は八本で、足のほとんどに吸盤が付いています。イカは足が十本で、そのうち二本は長い触腕です。
また、タコは頭のような丸い部分が胴体で、イカは細長い胴体の先に三角形のひれが付いているものが多くいます。
こうした違いをお子さんと探してみると、水族館がもっと楽しくなりますよ。
お子さんの「なんで?」を図鑑で調べると、タコとイカの違いも写真つきで分かって、学びが深まります。海の生き物の定番図鑑なら、学研の図鑑LIVEの「水の生き物」がおすすめです。写真やイラストが大きく、読み物としても楽しめるので、小学生のお子さんが自分で読み進めやすいですよ。
もう少し情報量のある図鑑をお探しなら、小学館の図鑑NEOの「水の生物」も人気です。長く使えるので、小学校高学年になってからも役立ちます。
タコは墨だけじゃない!ほかの身を守る技も大公開!
タコの身を守る方法は、墨だけではありません。実は、墨は「最後の切り札」のひとつです。ここでは、墨以外のすごい技をご紹介します。知れば知るほど、タコの賢さにおどろきますよ。
体の色や形を変える擬態の名人
タコは、周りの岩や海藻にあわせて、体の色や模様、さらには皮ふの質感まで変えられることで有名です。
この能力のおかげで、敵に見つかりにくくなります。墨を吐く前に、まず「見つからない作戦」を使っているわけですね。
水族館で岩にとけこんでいるタコを探すのは、まるで間違い探しのようで盛り上がります。
水をふき出してジェット噴射で逃げる
タコは、体の中の水を漏斗から勢いよくふき出して、その反動で一気に進むことができます。
墨を吐くときも、この水の勢いを使っています。墨で視界をさえぎりながら、ジェット噴射でぐんぐん逃げるのです。
煙幕とスピードを組み合わせて逃げるなんて、まるでスパイ映画のようですよね。
道具を使うほど賢いタコもいる!
ココナッツの殻を持ち運んで、あぶないときにかくれ家として使うタコが観察されています。まるで持ち歩ける防空壕のようですね。
これは、身を守るために道具を使う、とても賢い行動だと考えられています。
ただし、すべてのタコが同じようにふるまうわけではありません。種類や環境によって、行動はさまざまです。
深海のタコには墨を持たない種類もいる!
実は、すべてのタコが墨を持っているわけではありません。深海にすむタコのなかには、墨をためる袋がない種類もいるといわれています。
光がほとんど届かない暗い場所では、黒い煙幕を出しても効果が少ないのかもしれません。
暮らす環境によって体のしくみも変わるなんて、生き物の世界はおもしろいですよね。
水族館や磯遊びで役立つ!子どもと楽しむタコ観察のコツ!
ここまで読むと、「実際に見てみたい!」と思うお子さんも多いはずです。最後に、水族館や磯遊びでタコを観察するときのコツと、ご家庭でできる学びの広げ方をご紹介します。
水族館でタコの墨は見られる?
水族館では、タコが墨を吐く姿を見られる機会は、実はそれほど多くありません。タコにとって墨は、強く驚いたときの手段なので、落ち着いて暮らしているときはほとんど吐かないからです。
水槽をたたいたり、大きな声を出したりすると、タコにストレスを与えてしまいます。静かに見守って、体の色が変わる様子や、吸盤の動きを観察するのがおすすめです。
「今日はタコの色を探してみよう」と、お子さんと目標を決めて見学すると、楽しく学べますよ。
磯遊びで気をつけたいポイント
磯遊びでは、足元がすべりやすく、とがった貝殻や岩もたくさんあります。素足やビーチサンダルよりも、足をしっかり守れるマリンシューズがあると安心です。
また、暖かい海の岩場には、ヒョウモンダコのように毒を持つタコもいるといわれています。見つけても、むやみに手でさわらないようにしましょう。
お子さんには「見つけたら、さわらずにママを呼ぶ」と約束しておくと安心ですね。
おうちで楽しく学びを広げる方法
おうちでは、黒い絵の具や墨汁を水でうすめて、にじみ絵あそびをするのもおすすめです。墨が水に広がる様子を、タコの墨に見立てて遊べます。
あわせて、タコの絵本や図鑑を読むと、水族館で見た姿と知識が結びついて、記憶に残りやすくなります。
夏休みの自由研究にも発展させやすいテーマですよ。
磯遊びがもっと楽しくなるアイテム
磯遊びでは、水の中をのぞける道具があると、観察がぐんと楽しくなります。たとえば、水面にあてて海の中を見る箱めがねなら、水に入らなくても岩の間にいる生き物を探せます。小さなお子さんでも安全に楽しめるのがうれしいポイントです。
足を守るマリンシューズは、速乾タイプで、かかとまでしっかり包んでくれるものが便利です。サイズ調整ができるものなら、お子さんの成長にあわせて長く使えます。
よくある質問
ここでは、タコの墨について、お子さんやママからよく聞かれる疑問にお答えします。気になるところから読んでみてくださいね。
タコの墨にさわっても大丈夫?
一般的に、強い毒があるとは言われていませんが、目に入ると刺激を感じる可能性があります。さわってしまったときは、水でよく洗い流しましょう。
服に付くと落ちにくいこともあるため、磯遊びでは汚れてもいい服がおすすめです。
タコの墨は食べられる?
タコの墨は食べられると言われていますが、量が少なく、一般的な料理にはあまり使われていません。
イカの墨のように、パスタやご飯に使われることが多いのは、イカの墨のほうです。
タコは墨を吐きすぎると弱ってしまう?
墨を吐いたからといって、すぐに命にかかわるわけではないと考えられています。墨は体の中で時間をかけてまた作られます。
ただし、何度も驚かされたり、ストレスを受けたりすると、タコにとっては負担になります。観察するときはそっと見守りましょう。
墨を吐くのはタコとイカだけ?
墨を吐く生き物は、タコやイカのほかにもいます。たとえば、海にすむアメフラシも、紫がかった液体を出して身を守ります。
一方で、イカやタコのなかまでも、オウムガイのように墨を持たない生き物もいます。
タコは怒ると墨を吐くの?
「怒っているから」というよりも、「こわい」「危ない」と感じたときに吐くことが多いと考えられています。
人間のように感情を表現しているかどうかは、はっきり分かっていません。それでも、驚いたときに反応する姿を見ると、ついタコの気持ちを想像してしまいますよね。
まとめ
ここまで、タコがなぜ墨を吐くのかを、成分やイカとの違いも交えてご紹介しました。いちばん大切なのは、墨がタコの身を守るための大切な道具だということです。
墨は黒い煙幕のように敵の目をくらませ、においを感じる力もにぶらせるといわれています。成分には、人間の髪の毛にもあるメラニンがふくまれていて、色の正体はそこにありました。
イカの墨はねばり気が強く、にせものを作る作戦に使われます。タコの墨はさらっと広がる煙幕タイプで、使い方に違いがあるのもおもしろいところでしたね。
墨のほかにも、タコには擬態やジェット噴射など、身を守る技がたくさんあります。水族館や磯遊びで観察するときは、そっと見守って、タコの賢さを探してみてください。
お子さんの「なんで?」に一緒に向き合うことは、きっと親子の素敵な思い出になります。ぜひ今度のお出かけで、タコの観察を楽しんでみてくださいね!

コメント