海岸に巨大なクジラが打ち上げられた、というニュースを見て、「なんで?」と疑問に思ったことはありませんか?
お子さんと一緒にテレビを見ていて、「ねえ、なんでクジラが砂浜にいるの?」と聞かれて、うまく答えられなかったというママも多いのではないでしょうか。あの光景はとにかく衝撃的ですよね。海の王者ともいえる巨大なザトウクジラが、なすすべもなく砂浜に横たわっている。助けてあげたくてもどうにもならない歯がゆさ、子どもと一緒に感じたことがある方もいるかもしれません。
「ストランディング」という言葉を聞いたことがある方もいれば、初めて聞いたという方もいるでしょう。でも実は、この現象にはいくつかの原因が絡み合っていて、しっかり理解すると「なるほど!」と腑に落ちるんです。
この記事では、ザトウクジラのストランディングがなぜ起こるのか、その原因をわかりやすくひとつひとつ解説していきます。読み終えるころには、お子さんの「なんで?」に自信を持って答えられるようになっているはずです。ぜひ最後まで読んでみてください。
ストランディングってそもそも何?
ザトウクジラのストランディングを理解するには、まずこの言葉の意味を知るところから始めましょう。
「ストランディング」とは、クジラやイルカなどの海の哺乳類が、浜辺に打ち上げられたり乗り上げたりしてしまうことを指します。英語の「strand(岸に乗り上げる)」という言葉が由来です。
1頭だけの場合と、群れごとの場合がある
ストランディングには、1頭だけが浜辺に打ち上げられる「シングルストランディング」と、複数頭が同時に打ち上げられる「マスストランディング(集団座礁)」の2種類があります。
ザトウクジラの場合は1頭ずつのケースが多いのですが、世界各地でイルカやゴンドウクジラなどが数十頭・数百頭まとめて打ち上げられることもあり、そのニュースが国際的に報じられることも珍しくありません。
日本でも起きている身近な出来事
実は、ストランディングは遠い外国だけの話ではありません。日本でも年間200件以上のストランディングが記録されており、北海道から沖縄まで各地の海岸で起きています。
ザトウクジラをはじめ、マッコウクジラやシャチ、さまざまなイルカ類が浜辺に現れることが報告されており、専門家たちが調査・保護に当たっています。
必ずしも「死んでいる」わけではない
ストランディングというと、死んだクジラが打ち上げられる場面を想像しがちですが、生きたまま浜辺に乗り上げてしまうケースも多くあります。
生きている場合、体が乾いてしまったり、自分の体重で内臓が圧迫されたりして、時間が経つほど危険な状態になります。そのため、発見した場合は速やかに専門機関に連絡することがとても大切です。
ザトウクジラのストランディングが起きる主な原因
では、なぜザトウクジラは浜辺に乗り上げてしまうのでしょうか。原因はひとつではなく、いくつかの要因が組み合わさっていることが多いです。
病気やケガで体が弱ってしまった
健康なクジラは、自分の体の向きをコントロールして泳ぎ続けることができます。しかし、病気にかかっていたり、深刻なケガを負っていたりすると、その能力が失われてしまいます。
体が弱ったクジラは波に流されやすくなり、気がつけば浅瀬に入り込んでしまうのです。病気には、細菌や寄生虫による感染症のほか、脳や神経に影響する病気なども含まれます。
ナビゲーション(方向感覚)の乱れ
ザトウクジラをはじめとするクジラ類は、「エコーロケーション」と呼ばれる反響定位の能力を持っています。自分で音を出し、その反響を聞くことで周囲の環境を把握する仕組みです。
しかし、この精巧なシステムが何らかの理由で狂ってしまうと、浅い海を深い海と勘違いしたり、陸地に向かって泳いでしまったりすることがあります。
船のプロペラや漁具によるケガ
船のプロペラに巻き込まれたり、漁業用の網やロープが体に絡まったりすることで、重大なケガを負うクジラは少なくありません。
特に、漁具が体に絡んだまま長時間泳ぎ続けると、体力を著しく消耗します。そのまま弱ってしまい、最終的に浜辺に打ち上げられてしまうケースが世界各地で報告されています。
海の「音」が引き起こす問題
クジラにとって、音はとても重要です。見えない深海でコミュニケーションをとり、仲間を探し、エサを見つける。そのすべてに音が関わっています。だからこそ、海中の音環境の変化は、ストランディングの大きな原因になりえます。
軍用ソナーが方向感覚を狂わせる
海軍が潜水艦を探知するために使う「ソナー」は、非常に大きな音を海中に発します。この音は、クジラが使う音の周波数と重なることがあり、方向感覚を混乱させてしまうと考えられています。
ソナー訓練が行われた海域で、その直後に集団ストランディングが起きた事例が複数報告されており、国際的な問題として議論されています。
船舶が出す騒音が蓄積するストレス
世界中を行き交う大型船のエンジン音や、港湾工事の音が海中に響き続けることも、クジラにとって深刻なストレスとなります。
長期間にわたって騒音にさらされることで、体に異常をきたしたり、エサ場から遠ざかって衰弱したりすることがあります。
地震による音波の影響
海底地震が起きると、強烈な音波が海中に広がります。この急激な音の変化が、クジラの体内に物理的なダメージを与えることがあるとも言われています。
クジラは音に非常に敏感な生き物なので、急激な音圧の変化は、私たち人間が想像する以上に大きなダメージをもたらす可能性があります。
人間活動が引き起こすストランディング
自然界の要因だけでなく、私たちの暮らしがザトウクジラのストランディングに影響を与えているケースも増えてきました。
海洋プラスチックを飲み込んでしまう
ストランディングしたクジラの胃の中から、大量のプラスチックごみが発見されることがあります。クジラはエサと間違えてプラスチック袋や漁具の破片を飲み込んでしまうことがあるのです。
胃の中にプラスチックが溜まると、正常にエサを消化できなくなり、栄養失調に陥ります。弱った体では泳ぎ続ける力もなくなり、浜辺に打ち上げられてしまいます。
水温の変化とエサ不足
地球温暖化の影響で海水温が変化すると、クジラのエサとなるオキアミや小魚の分布も変わってきます。エサを追いかけて普段とは違うルートを泳ぐうちに、不慣れな浅い海に迷い込んでしまうことがあります。
ザトウクジラは毎年長い距離を移動する動物ですが、エサ場の変化によって行動パターンが乱れることが近年指摘されています。
化学物質による体への影響
農薬や工場排水などに含まれる化学物質が海に流れ込み、食物連鎖を通じてクジラの体内に蓄積することがあります。これを「生物濃縮」と言います。
こうした化学物質は、クジラの免疫力を低下させたり、繁殖に影響を与えたりするほか、神経系に障害をもたらすこともあります。
ザトウクジラを見に行くときのおすすめアイテム
ザトウクジラの観察ツアーに参加するときは、日差しや波しぶきから目を守るためのマリンサングラスや、滑りにくいマリンシューズがあると安心です。特にお子さん連れの場合は、足元の安全を確保することが大切です。コスパで選ぶなら子ども用マリンシューズ、防水性重視なら大人用のしっかりしたモデルがおすすめです。
ストランディングが起きたらどうすればいい?
もしも海岸でクジラが打ち上げられているのを見つけたら、どう行動すればよいのでしょうか。正しい知識を持っておくと、いざというときに慌てずに済みます。
まず専門機関に連絡することが最優先
ストランディングを発見したら、絶対に自分たちだけで動かそうとしないでください。クジラの体は非常に重く、また動物本人にとっても大きなストレスになります。
最寄りの水族館や、海上保安庁(118番)、または各地の自治体の担当窓口に連絡しましょう。専門家が判断して、適切な対応をとってくれます。
近づきすぎないことも大切
生きているクジラが打ち上げられている場合、パニックになったクジラが尾びれを激しく動かすことがあります。その力は非常に強く、大人でも吹き飛ばされる危険があります。
お子さんが「触りたい!」と言っても、安全な距離を保つことを必ず守ってください。
専門家と一緒に保護活動が行われることも
ストランディングしたクジラが生きている場合、専門家の指導のもと、多くのボランティアが協力して海に戻す作業が行われることがあります。
クジラが無事に海に戻っていく様子を見た子どもたちが、海の生き物への関心を深めるきっかけになったという声もあります。自然と命の大切さを学ぶ、貴重な機会になりえますね。
よくある質問
ザトウクジラのストランディングについて、読者の方からよく寄せられる疑問をまとめました。お子さんとの会話のヒントにもなりますので、ぜひ参考にしてみてください。
ザトウクジラはどのくらいの大きさですか?
ザトウクジラの体長はおよそ13〜15メートルほどで、体重は25〜30トンほどになります。大型バス2〜3台分の重さと言えばイメージしやすいでしょうか。その巨大さゆえ、一度砂浜に乗り上げてしまうと、自力で海に戻ることは非常に難しくなります。
ストランディングはなぜ防げないのですか?
クジラは広大な海を自由に泳いでいるため、一頭一頭を常時モニタリングすることは現実的ではありません。また、ストランディングの原因が複数あり、どれかひとつを解決すれば完全に防げるというものでもないのが現状です。研究者たちは今も原因の解明と対策の研究を続けています。
打ち上げられたクジラを海に戻すことはできますか?
生きている場合は、専門家と多くのボランティアの協力によって、海に戻せることがあります。ただし、クジラの体は非常に重く、また浅瀬への迷い込み自体が体の不調のサインである場合も多いため、戻した後に再びストランディングしてしまうケースも残念ながらあります。
子どもがストランディングを発見したらどうすれば良いですか?
まずは大人に伝えることが大切です。子ども自身はクジラに近づかず、触ろうとしないように伝えてください。大人は海上保安庁(118番)や最寄りの水族館、自治体に連絡しましょう。写真を撮るのは構いませんが、安全な距離を保つことが最優先です。
ストランディングはザトウクジラだけに起こることですか?
いいえ、ザトウクジラに限らず、さまざまな種類のクジラやイルカでストランディングは起きます。特にゴンドウクジラやマッコウクジラなどでも、集団ストランディングが報告されています。日本でも年間200件以上のストランディングが記録されており、決して珍しい現象ではありません。
海のプラスチックごみを減らすために、私たちにできることはありますか?
日常生活でのプラスチックごみを減らすことが、海の生き物を守る第一歩です。マイバッグやマイボトルを使う、海岸のごみ拾いに参加するなど、小さなことから始められます。お子さんと一緒に「海のために何かしよう」と話し合うきっかけにもなりますよ。
まとめ
ザトウクジラのストランディングには、病気やケガ、ナビゲーションの乱れ、軍用ソナーや船舶の騒音、海洋プラスチックや化学物質による汚染、温暖化によるエサ場の変化など、さまざまな原因が複雑に絡み合っていることがわかりました。
どれかひとつが原因ではなく、自然環境と人間活動の両方がクジラたちの生活に影響を与えているというのが、現在の研究者たちの見解です。
特に、海洋プラスチックや騒音汚染は、私たちの生活と直結した問題です。「クジラが打ち上げられるのは遠い話」ではなく、私たちの暮らし方がクジラの命に関わっているとも言えます。
お子さんとニュースを見ながら「なんでクジラが砂浜にいるの?」という疑問を持ったとき、ぜひこの記事の内容を思い出してみてください。「クジラは病気になったり、海の音がうるさくて迷子になることがあるんだよ」「だから、ごみを海に捨てないことが大切なんだよ」と伝えられると、子どもの心にも「自分にもできることがある」という気持ちが芽生えるかもしれません。
ザトウクジラは、歌うように鳴き、海を渡り、命をつなぐ壮大な生き物です。その大きな命が少しでも長く、健やかに海を泳ぎ続けられるよう、私たちひとりひとりにできることを考えていけるといいですね。

コメント